
社会保険料の推移は、5つの制度の料率を毎年積み上げた棒グラフで見ると、どの制度がどれだけ伸びたかを追えます。比べる起点は、賞与にも同じ料率がかかるようになった2003年度にそろえました。
会社員が給与から払う社会保険料の料率は、2003年度から2026年度までの23年で上がってきました。厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険・子ども・子育て支援金の5つを合わせた本人負担率は、40〜64歳で12.0%から15.5%になりました。月給30万円の人に当てはめると、本人負担は月3万6,105円から月4万6,575円になり、年間では12万5,640円増えた計算です(賞与を除く)。
本記事では、日本年金機構・全国健康保険協会・厚生労働省・こども家庭庁が公表した料率をもとに、各年度4月1日時点の料率を毎年足し合わせました。健康保険は協会けんぽの全国平均、雇用保険は一般の事業の料率です。2003年4月の総報酬制で料率の土台が変わったため、合計の比較は2003年度以降に限っています。
社会保険料の料率は、2003年度からどこまで上がったか?
本人負担率は12.0%から15.5%へ。
出典:日本年金機構「厚生年金保険料率の変遷」・全国健康保険協会「保険料率」・厚生労働省「雇用保険料率」・こども家庭庁「子ども・子育て支援金」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
本人負担率は12.0%から15.5%に|5つの制度を積み上げた23年

毎年の料率は、制度ごとに色を分けた積み上げ棒で見ると、伸びた部分がどの制度かを追えます。いちばん下の濃い赤の帯が厚生年金です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2003年度の本人負担率(40〜64歳)は12.0%でした。内訳は厚生年金が6.79%、健康保険が4.1%、介護保険が0.445%、雇用保険が0.7%です。その後は2005年度に12.5%、2010年度に13.9%、2014年度に14.9%と上がり、2023年度の15.7%が最も高い値でした。
2026年度は15.5%で、2023年度をわずかに下回ります。会社が払う分を合わせた労使合計の料率は、2003年度の24.42%から2026年度は31.40%になりました。本人負担率が前年度を下回った年度は23年間で4回あり、下げ幅はいずれも0.11ポイント以内でした。
各年度4月1日時点の料率を足し合わせるこの方法は、内閣府の税制調査会の資料と同じです。同じ方法で計算した2014年度の本人負担14.92%は、同資料の値と一致します。
月給30万円で見る本人負担|月3万6,105円から4万6,575円へ

料率を金額に置き換えると、負担の変化がぐっと身近になります。月給30万円の人の毎月の負担を、年齢で分けた2本の折れ線で並べました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
標準報酬月額を30万円と置き、各年度の本人負担率をかけて月額を出しました。40〜64歳では2003年度の月3万6,105円が、2026年度は月4万6,575円です。増えた額は月1万470円で、12か月分では12万5,640円になります。賞与にかかる保険料は含めていません。
40歳未満は介護保険料がかからないため、2003年度の月3万4,770円から2026年度は月4万4,145円で、増えた額は月9,375円です。折れ線が大きく上がる2010年度は、協会けんぽの平均保険料率が8.2%から9.34%になった年度にあたります。月額が最も高かったのは2023年度の月4万6,980円でした。
税金を含めた手取り額の変化は、年収別の手取り額の推移を図解した記事でまとめています。本記事は、そのうち社会保険料の料率だけを毎年の連続した数字で追っています。
増えた分の約7割は厚生年金|2004年から13年続いた引上げ

どの制度が増加を引っ張ったかは、増えた幅を制度ごとの横棒にすると比べやすくなります。厚生年金は、80年あまりの長い階段グラフでも確かめます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2003年度から2026年度にかけて、労使合計の料率は6.98ポイント上がりました。制度別では厚生年金が4.72ポイント、健康保険が1.70ポイント、介護保険が0.73ポイント、子ども・子育て支援金が0.23ポイントの増加です。雇用保険だけは0.40ポイント下がりました。増えた分の約68%、つまり約7割を厚生年金の引上げが占めています。
厚生年金の料率は、2004年10月から毎年9月に0.354%ずつ引き上げられ、2017年9月の18.3%で引上げが終わりました。日本年金機構の変遷表には、2017年9月を最後に料率が18.3%で固定されたと記されています。年金の制度そのものは、年金の仕組みを解説した記事で詳しく扱っています。
厚生年金の料率は80年でどう動いたか
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
厚生年金の保険料率は、1942年6月の6.4%から始まり、1948年8月に3.0%まで下がったあと、段階的に上がってきました。1996年10月には月給に対して17.35%になっています。
2003年4月の総報酬制で、賞与にも同じ料率がかかるようになり、料率は13.58%に下がりました。数字は下がっても保険料をかける対象が賞与まで広がったため、2002年度以前の料率とは同じ物差しで比べられません。本記事が合計の比較を2003年度以降に限っているのはこのためです。
健康保険と介護保険の料率|2026年度は34年ぶりの引下げ

健康保険と介護保険は、料率の水準がひと桁違うため、上下2段の折れ線に分けました。縦の点線は、総報酬制が始まった2003年度です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
政府管掌健康保険(2008年10月からは全国健康保険協会、通称協会けんぽ)の料率は、1989年度の8.3%から始まり、1992年度から8.2%、1997年9月から8.5%でした。総報酬制の2003年度に8.2%となり、2010年度に9.34%、2011年度に9.50%、2012年度に10.0%へ上がりました。
10.0%は2025年度まで14年間続き、2026年度は平均9.9%になりました。全国健康保険協会は、この引下げを協会の発足以来初めてで、政管健保の時代を含めると34年ぶりとしています。健康保険の制度については、健康保険の仕組みを解説した記事で図解しています。
介護保険料率(40〜64歳)は、介護保険制度が始まった2000年度の0.60%から上がり、2023年度に1.82%で最も高くなりました。2026年度は1.62%です。健康保険と違い、介護保険料率は年度ごとに上がったり下がったりしています。
2026年度の内訳|本人と会社はいくら払っているか

2026年度の料率を、本人と会社に分けて表にしました。月給30万円の場合の金額も並べています。
| 制度 | 本人 料率(%) | 会社 料率(%) | 本人 月額(円) | 会社 月額(円) |
|---|---|---|---|---|
| 厚生年金 | 9.15 | 9.15 | 27,450 | 27,450 |
| 健康保険 | 4.95 | 4.95 | 14,850 | 14,850 |
| 介護保険 (40〜 64歳) | 0.81 | 0.81 | 2,430 | 2,430 |
| 雇用保険 | 0.5 | 0.85 | 1,500 | 2,550 |
| 子ども・ 子育て 支援金 | 0.115 | 0.115 | 345 | 345 |
| 合計 (40〜 64歳) | 15.525 | 15.875 | 46,575 | 47,625 |
| 合計 (40歳 未満) | 14.715 | 15.065 | 44,145 | 45,195 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2026年度の本人負担は、40〜64歳で15.525%、月給30万円で月4万6,575円です。内訳は厚生年金が2万7,450円、健康保険が1万4,850円、介護保険が2,430円、雇用保険が1,500円、子ども・子育て支援金が345円です。
会社が払う分は15.875%で、月4万7,625円です。本人と会社の料率の差は雇用保険の部分だけで、会社のほうが0.35ポイント多く払っています。雇用保険の料率のうち、雇用保険二事業の0.35%は会社だけが払う決まりです。
このほか会社は、子ども・子育て拠出金と労災保険料も全額を払っていますが、本人の負担がないため本記事の料率には含めていません。子ども・子育て支援金は2026年4月分から始まった制度で、2027年度以降の料率はまだ決まっていません。
制度改正の年表|2000年度からの8つの節目

料率が動いた背景にある制度の変化を、年表に並べました。上から古い順です。
年表の節目のうち、料率の合計に最も大きく響いたのは、2004年10月から2017年9月まで続いた厚生年金の引上げです。2026年度は、健康保険の平均料率の引下げと支援金の開始が同じ年度に重なりました。
楓のまとめ|社会保険料率の23年を3つの観察で整理

ここまでの図を並べると、料率の上がり方と、その中身の偏りが見えてきます。3つの観察事実に整理します。
社会保険料の料率は、制度ごとに決まり方も改定の時期も違います。5つの料率を毎年足し合わせて並べると、上がった時期と、増えた分の中身の偏りがはっきりします。
23年間の本人負担率の上昇3.5ポイントのうち、およそ2.4ポイントが厚生年金の引上げによるものです。料率の数字を比べるときは、どの年度のいつ時点の料率か、どの保険者の料率か、賞与を含むかの3点をそろえると、読み違いを防げます。
よくある質問(FAQ)

社会保険料の料率を見るときは、時点・保険者・賞与の扱いの3点をそろえて確認してください。条件が違う数字どうしを並べると、増減を読み違えます。
Q1. なぜ2003年度より前と比べないのですか?
2003年4月の総報酬制で、保険料をかける対象が月給だけから賞与まで広がったためです。厚生年金の料率は17.35%から13.58%に、健康保険は8.5%から8.2%に下がりましたが、これは料率の土台が変わったことによるもので、負担が軽くなったことを意味しません。厚生年金だけなら、1942年からの長い推移を本文の階段グラフで確認できます。
Q2. 健康保険組合や共済組合に入っている人も同じ料率ですか?
同じではありません。健康保険料率は保険者ごとに決まり、協会けんぽでも都道府県ごとに異なります。厚生労働省の資料では、2023年度の平均保険料率は協会けんぽが10.0%、健康保険組合が9.3%(決算見込み)でした。本記事の数字は協会けんぽの全国平均で計算しています。
Q3. 40歳になると何が変わりますか?
40歳から64歳までの人は、健康保険料とあわせて介護保険料を払います。2026年度の協会けんぽの介護保険料率は1.62%で、本人の負担はその半分の0.81%です。月給30万円なら月2,430円で、40歳未満の月4万4,145円に対し、40〜64歳は月4万6,575円になります。
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