
食料自給率は、熱量で測るか金額で測るかで数字が変わります。主要9か国を2つの指標で並べ、順位がどこで入れ替わるかを1枚の図に置くと、日本の位置が見えやすくなります。
農林水産省は2026年8月7日、令和7年度の食料自給率を公表しました。同じ資料に載る主要9か国の試算値で並べると、日本の食料自給率はカロリーベース37%で9番目、生産額ベース66%で5番目という位置になります。同じ国の同じ食料でも、測る単位を変えると順位が4つ動く並びです。
この9か国の数値は、農林水産省がFAOの食料需給表などを基に試算したものです。諸外国は2023年、日本は令和7年度(2025年度)の概算値で、同じ年をそろえた比較ではありません。スイスのカロリーベースとイギリスの生産額ベースは、各国政府の公表値が掲載されています。
日本の1人1日当たりの供給熱量2,237kcalを、ごはん茶わん1杯(150g・234kcal)に置き換えると約9.6杯分にあたります。このうち国産で賄われている830kcalは約3.5杯分です。カロリーベース37%という数字は、9.6杯のうち3.5杯が国産、という並びに置き換えられます。
本記事では、この公表資料をもとに、主要9か国の2指標、品目別の自給率、日本に供給される熱量と消費額の国別構成、食料自給率と食料国産率の違い、3つ目の指標である摂取熱量ベースまでを、6枚の図解で順に整理します。数値はすべて2026年8月7日公表の資料に掲載されたもので、日本の令和7年度分は概算値です。
日本の食料自給率は、主要9か国の中で何番目でしょうか。
カロリーベースは37%で9番目、生産額ベースは66%で5番目という並びになります。
主要9か国中 9位 熱量で測る
主要9か国中 5位 金額で測る
差29ポイント(主要9か国で最大の開き)
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
主要9か国を2つの指標で並べる|日本は9位と5位

2つの指標を別々の表で見ると水準がつかみにくいので、同じ目盛りの横棒に並べました。国ごとに2本の長さがどれだけ違うかが、そのまま指標の差になります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
カロリーベースで並べると、上位はオーストラリア257%、カナダ195%、フランス119%、アメリカ112%と続きます。以下はドイツ81%、イギリス56%、イタリア51%、スイス46%で、日本の37%が9か国のうち最も低い数値です。農林水産省は、国内の消費人口が小さく穀物や油糧種子の生産量が多い国が上位に位置づけられると記述しています。
生産額ベースに切り替えると、並び方が変わります。オーストラリア141%、カナダ115%、フランス74%までは同じ順ですが、そのあとにイタリア72%、日本66%、アメリカ64%、イギリス62%、スイス58%、ドイツ42%が続きます。カロリーベースで9番目だった日本が、生産額ベースでは5番目に位置します。
数値の並び順では、日本の生産額ベース66%はアメリカ64%、イギリス62%、スイス58%、ドイツ42%を上回ります。一方で農林水産省は同じ資料の中で、我が国の食料自給率は諸外国と比較するとカロリーベース、生産額ベースともに低い水準にあると記述しています。ここでは、数値の並びと資料の記述をそのまま併記しておきます。
順位はどこで入れ替わるか|日本は9位から5位、ドイツは5位から9位

順位の入れ替わりは、左右に順位を並べて線で結ぶと一目で追えます。線が交差している場所が、指標を変えたときに位置が動いた国です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
左がカロリーベースの順位、右が生産額ベースの順位です。オーストラリア、カナダ、フランスの3か国はどちらの指標でも1位から3位で変わりません。スイスも8位のままです。線が水平に近いほど、指標を変えても位置が動かない国ということになります。
大きく動くのは4か国です。イタリアは7位から4位へ、日本は9位から5位へ上がり、アメリカは4位から6位へ、ドイツは5位から9位へ下がります。日本とドイツは、2つの指標のあいだで位置がちょうど入れ替わる形です。イギリスも6位から7位へ1つ動いています。
生産額ベースがカロリーベースを上回る国は、日本・イタリア・スイス・イギリスの4か国です。その幅は日本が29ポイント、イタリアが21ポイント、スイスが12ポイント、イギリスが6ポイントで、上回る幅は日本が9か国のうち最も大きい数値になっています。
農林水産省は、生産額ベースについて、野菜や果実の輸出量が多いイタリアがドイツやイギリスを上回るなど、カロリーに比して価格の高い野菜・果実・畜産物の動向がより反映される傾向にあると記述しています。なお、この順位表は編集部が試算値を並べ替えたもので、原典に順位そのものの表は掲載されていません。
品目別に見ると|油脂類は4%と46%、畜産物は17%と56%

指標で数字が変わるのは国だけではありません。品目ごとに2つの自給率を点で結ぶと、どの品目で開きが大きいかがそのまま線の長さになります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
差が最も大きいのは「その他」の44ポイントで、次いで油脂類が4%と46%で42ポイント、畜産物が17%と56%で39ポイント、果実が28%と61%で33ポイントと続きます。砂糖類は33%と54%、野菜は73%と87%、大豆は25%と36%です。
一方、米は96%と99%で差は3ポイント、小麦は16%と16%で2つの指標が一致します。10品目のうち魚介類だけは46%と42%で、生産額ベースがカロリーベースを下回ります。日本の漁獲量そのものの推移はサケの漁獲量の推移の記事でも扱っています。
なお、この対比表は、原典で品目別供給熱量自給率と品目別生産額自給率が別々の図に分かれているものを、編集部が突き合わせて1枚にしたものです。原典に品目別の対比表そのものは掲載されていません。数値はいずれも令和7年度の概算値で、四捨五入の関係で合計と内訳が一致しない場合があります。
日本の食料はどこから来ているか|熱量は上位4者で84%

自給率の残りの部分がどこから来ているかは、100%の帯を国別に区切ると位置関係がつかめます。熱量の帯と金額の帯を上下に並べました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
1人1日当たりの供給熱量2,237kcalの内訳は、国産37%、米国26%、カナダ11%、豪州10%で、この4者で84%を占めます。残りにはタイ、ニュージーランド、インドネシア、フィリピンなどが含まれます。カロリーベース自給率で上位に並ぶ豪州・カナダ・米国が、日本の輸入元でも上位に並びます。
金額の側の内訳は、国内消費仕向額21.8兆円のうち国産66%、米国9%、中国4%、豪州3%で、上位4者が82%を占めます。金額は消費段階の小売価格ではなく、生産・輸入段階の価格で評価した金額です。熱量の帯と金額の帯では、国産以外の顔ぶれも構成比も異なる並びになります。
この国別構成は、主要品目の国・地域別の輸入量と輸入額を按分して試算されたもので、輸出分と在庫分は捨象されています。日本の自給率が長期的にどう動いてきたかは日本の食料自給率、60年の推移の記事で、生産の担い手側の推移は日本の農業従事者の推移の記事で扱っています。
「食料自給率」と「食料国産率」は何が違うか

よく似た2つの言葉は、輸入飼料で育てた畜産物を国産に数えるかどうかで分かれます。同じ区分を2本の棒で並べると、差が開く場所がはっきりします。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総合食料自給率は、輸入飼料による畜産物の生産分を除いて計算します。食料国産率はこれを除かずに計算する指標で、令和7年度はカロリーベースで自給率37%に対して国産率46%、差は9ポイントです。飼料自給率は純国内産飼料供給量5,740TDN千トンを飼料供給量23,451TDN千トンで割った24%です。
差が開くのは畜産物で、自給率17%に対して国産率66%と49ポイントの開きがあります。品目別では鶏卵が11%と97%で86ポイント、鶏肉が7%と65%で58ポイント、豚肉が5%と49%で44ポイント、牛肉が13%と50%で37ポイント、牛乳・乳製品が30%と66%で36ポイントです。
前掲の主要9か国の比較は、食料自給率どうしを並べたもので、食料国産率は含みません。生産額ベースでは、食料国産率は15.4兆円を21.8兆円で割った71%で、生産額ベース食料自給率66%との差は5ポイントです。
3つ目の指標「摂取熱量ベース」|同じ830kcalが45%になる

令和7年の基本計画で、3つ目の指標が加わりました。分子は同じで分母だけが変わる関係なので、2本の帯を並べて長さの違いを見るのが早道です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
摂取熱量ベース食料自給率は、1人1日当たり国産供給熱量830kcalを、平時において国民の日常生活に必要な摂取熱量1,850kcalで割った45%です。カロリーベースの分母である総供給熱量2,237kcalと比べると、分母が387kcal小さくなります。分子が同じでも、分母の取り方で37%と45%に分かれます。
1,850kcalという水準は、日本人の成人男性の基礎代謝量が1,300kcalから1,600kcal程度であること、平時における1人1日当たりの平均摂取熱量の最低値が2010年の1,849kcalであることを参考に設定されたと資料に記されています。摂取熱量ベースは令和6年度が46%、令和7年度が45%です。
なお、令和7年度のカロリーベース37%は前年度から1ポイント下がり、生産額ベース66%は2ポイント上がりました。農林水産省は、カロリーベースについては米の消費量の減少と民間在庫量の増加、生産額ベースについては米と畜産物の国内価格上昇を挙げています。
楓のまとめ|指標を変えると順位が動く、その並びを記録しておく

ここまでの図解を重ねると、国際比較・品目・供給元の3つの層で同じ構造が繰り返し現れます。3つの観察事実に整理してみます。
「世界の食料自給率で日本は何位か」という問いに対して、本記事で並べた図解は、指標を選んだ時点で順位が決まる関係を示してきました。どちらの指標が正しいかを決めるのではなく、数値がどう並ぶ形になっているかを、以下に書き出しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、食料自給率という1つの言葉が、熱量・金額・摂取熱量という3つの分母を持ち、それぞれ別の並びを描いていることがわかります。「世界で何位か」という問いの答えは、どの指標で測るかを決めた時点で変わります。国際比較の別の切り口は一人当たりGDPの国際比較の記事でも扱っています。
よくある質問(FAQ)

食料自給率の数字を読むときは、指標・時点・範囲の3点をセットで確認してください。この3点が変わるだけで、同じ国の数字でも並びが変わります。
Q1. カロリーベースと生産額ベースは、どちらが正しい食料自給率ですか?
どちらも農林水産省が公表している総合食料自給率で、供給熱量で単位をそろえたものと、金額で単位をそろえたものという違いがあります。令和7年食料・農業・農村基本計画では、これに摂取熱量ベースが加えられ、3つの指標が併記されています。指標ごとに分母と分子の定義が異なるため、同じ年度でも数値と順位は一致しません。
Q2. 諸外国の数値はいつのものですか?
2026年8月7日に公表された資料では、諸外国は2023年(暦年)、日本のみ令和7年度(2025年度・概算値)です。同じ年をそろえた比較ではない点が原典の注記に明記されています。またスイスのカロリーベースとイギリスの生産額ベースは、各国政府の公表値が掲載されています。
Q3. 「食料自給率」と「食料国産率」は何が違いますか?
総合食料自給率は輸入飼料による畜産物の生産分を除いて計算し、食料国産率はこれを除かずに計算します。令和7年度はカロリーベースで自給率37%に対し国産率46%、畜産物では17%と66%です。主要9か国との比較に使われているのは食料自給率どうしで、食料国産率は含まれていません。
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