
「昔より暑い日が増えた」と感じたとき、実際に何日ぶん増えたのかは、年ごとの日数を並べてみると輪郭がはっきりします。30℃以上の日と35℃以上の日を分けて見ると、増え方がずいぶん違うことも見えてきます。
「真夏日」は日最高気温30℃以上の日、「猛暑日」は35℃以上の日を指します。気象庁が都市化の影響が比較的小さいとみられる全国13地点の平均で見ると、真夏日の年間日数は100年あたり10日増え、猛暑日は3日増えています。統計期間は1929年から2024年までです。
地点を東京にしぼると、増え方の違いがもっとはっきりします。真夏日の年間日数は1910〜1939年の平均39.5日から1995〜2024年の平均57.2日へ、猛暑日は同じ期間に0.5日から7.0日へと変わりました。かつて東京の35℃以上の日は約2年に1日でしたが、直近30年では年に約7日です(編集部試算)。
この記事では、気象庁「ヒートアイランド現象」の階級別日数データ、大都市11地点の年別日数、文部科学省・気象庁『日本の気候変動2025』の将来予測をもとに、東京149年の推移、30℃と35℃の増え方の差、冬日・熱帯夜を含む4指標の比較、地点ごとの差、21世紀末の予測の順に整理します。
30℃以上の日は、以前と比べてどれくらい増えたのでしょうか?
全国13地点平均で、100年あたり10日の増加です。
出典:気象庁「ヒートアイランド現象 1.3 気温の階級別日数の長期変化傾向」(統計期間1929〜2024年)/気象庁「大都市における真夏日日数/猛暑日日数の長期変化傾向」東京(1876〜2024年)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
東京の真夏日は、149年でどう変わったか

年ごとの日数は上下の振れが大きいので、149本の棒に5年移動平均の線を重ねました。振れの中にどんな傾きがあるのかを見比べてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
気象庁が公開している東京の真夏日の年別日数は、1876年から2024年までの149年分あります。1876年は49日、1900年は33日、1950年は65日というように、年ごとの値は毎年大きく上下しています。年単位の振れ幅は最少9日から最多90日まであり、隣り合う年でも20日以上ちがうことがめずらしくありません。
最少は1902年の9日、最多は2023年の90日です。2位は2024年の83日で、上位2年が直近2年に並んでいます。5年移動平均の線をたどると、1880年代から1940年代までは30日台から50日台のあいだを行き来し、1990年代以降は50日台から60日台の水準に移っています。
ひとつ注意が必要なのは、東京の観測場所が2014年12月に移転していることです。気象庁はこの前後のデータを均質ではないものとして扱い、移転をまたぐ期間の5年移動平均も示していません。この図でも同じ扱いにしています。東京については、100年あたりの変化率も算出されていません。
30℃の日と35℃の日では、増え方が違う

同じ東京でも、30℃以上と35℃以上では増え方の形が違います。上の棒グラフで猛暑日の出方を見てから、下の30年平均の対比に目を移してみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
東京の猛暑日の年別日数を並べると、1876年から1993年までの118年間は、ほとんどの年が0日から数日にとどまっています。この118年間の最多は1942年と1978年の7日で、8日以上を記録した年は1993年まで一度もありません。0日の年も繰り返し現れます。
変化が見えるのは1990年代です。1994年に8日、1995年に13日となり、統計開始以来はじめて二桁に達しました。2010年13日、2013年12日、2018年から2020年は3年続けて12日、2022年16日、2023年22日、2024年20日と、二桁の年が並ぶようになっています。文部科学省と気象庁は『日本の気候変動2025』で、猛暑日の日数は1990年代半ばを境に大きく増加していると記述しています。
30年平均で比べると、東京の真夏日は1910〜1939年の39.5日から1995〜2024年の57.2日で、17.7日の増加、倍率にすると約1.4倍です。猛暑日は同じ期間に0.5日から7.0日で、6.5日の増加、倍率にすると約15倍になります。増えた日数そのものは真夏日の方が多く、増え方の倍率は猛暑日の方が大きいという並びです。
これらの30年平均は、気象庁が公表している平年値ではなく、公開されている年別日数から可視化pedia編集部が計算した値です。東京は観測場所の移転がある地点のため、変化率ではなく、期間ごとの平均値の対比という形で示しています。
「全国」で見るとどうなるか|13地点平均という物差し

全国の傾向を見るときに気象庁が使うのが13地点の平均です。大都市6地点の値と並べると、物差しの意味がつかみやすくなります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
この記事で「全国」と書くとき、それは全国のアメダス地点をすべて平均した値ではありません。気象庁が日本の平均気温の算出に使う15地点、すなわち網走・根室・寿都・山形・石巻・伏木・飯田・銚子・境・浜田・彦根・宮崎・多度津・名瀬・石垣島から、移転等の影響を除くことが難しい飯田と宮崎を除いた13地点の平均です。
この13地点平均で見ると、真夏日の年間日数は100年あたり10日、猛暑日は3日増えています。1地点あたりの年間日数として読む値であり、全国の延べ日数ではありません。同じ統計期間で大都市を見ると、真夏日は横浜が26日、福岡が18日、名古屋と京都が17日、仙台が15日、札幌が5日です。
猛暑日では京都が17日、福岡が14日、名古屋が13日と、真夏日に近い水準まで並びます。札幌の猛暑日は0日で、気象庁は発生頻度が非常に少ないため統計的に有意な変化傾向は認められないとしています。気象庁はこの地点差について、地球温暖化に都市化の影響が加わり、気温の上昇率が高くなっていると評価しています。
この表に東京・新潟・大阪・広島・鹿児島が載っていないのは、観測場所の移転に伴う影響を除去することが困難なためです。気象庁はこれら5地点について100年あたりの変化率を算出していません。東京の年別日数は公開されていますが、変化率として比較できる数値は存在しない点に注意が必要です。
増えた日と減った日を、同じ物差しで並べる

暑い側の指標だけを見ていると気づきにくいものがあります。冬日と熱帯夜を同じ物差しに載せると、動きの大きさの順番が変わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
気象庁は同じ13地点平均について、冬日(日最低気温0℃未満)と熱帯夜(日最低気温25℃以上)の変化率も公表しています。統計期間はいずれも1929年から2024年までです。100年あたりで見ると、冬日は22日の減少、熱帯夜は20日の増加、真夏日は10日の増加、猛暑日は3日の増加でした。
ゼロを中心にして左右に並べると、動いた幅が最も大きいのは冬日と熱帯夜で、真夏日と猛暑日はそれよりも小さいという順番になります。冬日と熱帯夜はいずれも日最低気温を基準にした指標で、真夏日と猛暑日は日最高気温を基準にした指標です。
気象庁は、都市化による気温上昇は夏より冬の方が大きく、日最高気温よりも日最低気温に現れやすいと記述しています。大都市6地点で見ても、冬日は札幌の47日減少から京都の71日減少まで、熱帯夜は札幌の1日増加から福岡の51日増加まで、いずれも真夏日・猛暑日より大きな幅で動いています。
都市によって、増え方はどれくらい違うか

11の大都市について、前の30年と直近の30年の平均を並べました。線の長さがそのまま増えた日数にあたります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
大都市11地点について、11地点すべてで値が揃う1929〜1958年の30年平均と、直近の1995〜2024年の30年平均を計算しました。真夏日では、京都が67.2日から79.6日、鹿児島が67.1日から81.7日、大阪が65.1日から77.7日と、もともと日数の多い地点がさらに増えています。増えた日数が最も大きいのは広島の21.3日、次いで横浜の18.2日でした。
札幌は9.0日から10.7日で、増加は1.7日にとどまります。仙台は16.2日から26.8日、新潟は31.8日から39.0日、東京は44.8日から57.2日でした。真夏日の水準そのものは西日本の地点で高く、北日本の地点で低いという地理的な差が、両方の期間を通じて保たれています。
猛暑日では順番が少し変わります。前の30年で最も多かったのは京都の11.0日、名古屋の8.1日で、東京は1.2日、広島は0.7日、横浜は0.3日でした。直近30年では京都22.2日、大阪16.3日、名古屋16.9日、福岡10.0日、広島9.7日となり、もともと少なかった地点でも二桁に近づいています。
ここに並べたのは変化率ではなく、期間ごとの平均値です。東京・新潟・大阪・広島・鹿児島は観測場所の移転があった地点で、移転の影響が含まれた値である点に注意してください。地点ごとの統計開始年が異なるため、前期は全地点で値が揃う1929年からの30年間としています。
今後はどう予測されているか

ここからは観測ではなく予測の話になります。予測は幅を持った値として示されるので、幅ごと読み取れるように誤差の線も入れました。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
文部科学省と気象庁は『日本の気候変動2025』で、21世紀末(2076〜2095年の平均)の気候を20世紀末(1980〜1999年の平均)と比べた予測を示しています。猛暑日の年間日数は、2℃上昇シナリオで2.9日、4℃上昇シナリオで17.5日の増加と予測されています。全国平均の値です。
熱帯夜の年間日数は2℃上昇シナリオで8.2日、4℃上昇シナリオで38.0日の増加、冬日の年間日数は2℃上昇シナリオで16.6日、4℃上昇シナリオで46.2日の減少と予測されています。年平均気温そのものは、2℃上昇シナリオで1.4℃、4℃上昇シナリオで4.5℃の上昇です。
2℃上昇シナリオはパリ協定の目標が達成された場合、4℃上昇シナリオは追加的な緩和策を取らなかった場合を指します。数値に付いている幅は、将来気候における年々変動の幅です。なお、この表には真夏日の年間日数の予測値は含まれていません。
観測されてきた変化と、これから予測されている変化は、別の性質の数値です。この記事の前半で扱った100年あたりの変化率や年別日数は観測にもとづく確定値で、この節の数値はモデルによる予測です。混ぜて読まないようにしてください。
楓のまとめ|30℃の日と35℃の日は、別々の増え方をしている

ここまでの図解を並べ直すと、指標ごとに動きの大きさも形も違うことが見えてきます。3つの観察事実に整理します。
「真夏日と猛暑日はどれくらい増えたのか」という問いに対して、この記事で並べた図解は、指標ごとに違う答えを返してきました。地点の取り方、統計期間の取り方、指標の閾値の取り方で、読み取れる数値は変わります。数値そのものに優劣をつけず、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねて読むと、「暑い日が増えた」という一つの言い方の中に、増え方の異なる複数の指標が同居していることがわかります。日数として最も増えたのは真夏日、倍率として最も変わったのは猛暑日、そして100年あたりの幅として最も動いたのは冬日と熱帯夜でした。「どれくらい増えたのか」への答えは、どの指標を、どの地点で、どの期間で見るかによって変わる、という観察事実そのものが、いまの気温データの見え方をよく映しています。
よくある質問(FAQ)

気温の日数データを読むときは、地点の取り方・統計期間・観測場所の移転の3点をセットで確認してください。この3点で数値の意味が変わります。
Q1. 記事の「全国13地点平均」とは何ですか?
気象庁が日本の平均気温の算出に使う15地点(網走・根室・寿都・山形・石巻・伏木・飯田・銚子・境・浜田・彦根・宮崎・多度津・名瀬・石垣島)のうち、移転等による影響の除去が困難な宮崎と飯田を除いた13地点の平均です。全国のアメダス地点をすべて平均した値ではなく、1地点あたりの年間日数として読む値です。都市化等による環境の変化が比較的小さい地点として選ばれているため、都市化の影響を大きく受けにくい物差しになります。
Q2. なぜ東京の「100年あたり何日増えた」という数値がないのですか?
東京は2014年12月に観測場所が移転しており、その前後のデータが均質ではないためです。気象庁は、日最高気温・日最低気温にもとづく日数の値について、移転の影響を除去する補正方法が現時点では確立していないとしています。このため東京・新潟・大阪・広島・鹿児島の5地点では、100年あたりの変化率を算出していません。年別の日数そのものは公開されているので、この記事では期間ごとの平均値の対比という形で扱っています。
Q3. この記事の数値は2025年の暑さを含んでいますか?
含んでいません。気象庁のヒートアイランド現象のページで公開されている観測データは2024年までで、次回の更新は2026年7月に予定されています。この記事の年別日数・30年平均・100年あたりの変化率は、いずれも2024年までのデータにもとづく値です。2025年の記録について調べる場合は、気象庁の過去の気象データ検索など、別の系列で確認してください。
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