
物価の長い推移は、表の数字を追うより、1本の折れ線と前年比の棒グラフを並べると全体の形がつかめます。戦後すぐの上昇、1990年代半ばからの横ばい、そして2020年代の上昇が、1枚ずつの図で見えてきます。
消費者物価指数は、総務省統計局が1946年8月に作成を始めてから2026年で80年になります。2025年基準の長期時系列データで比べると、持ち家を借家とみなした家賃(持家の帰属家賃)を除いた全国の指数「持家の帰属家賃を除く総合」は、1947年の4.7から2025年の100へと上がりました。1947年の物価を1とすると、2025年は約21倍の水準です。1947年に100円で買えた品物の組み合わせは、2025年の約2,100円にあたる計算です。
直近の動きも、長い推移の中で目立ちます。ニュースで使われる「総合」指数は、2020年から2025年の5年間で12.0%上がりました。1990年から2020年までの30年間の上昇(11.5%)を上回る幅です。本記事では、2026年8月の基準改定後に公開された2025年=100の指数をもとに、戦後の物価の推移を折れ線・前年比・年代別・費目別の図解で整理します。物価の今後の見通しや、家計・資産運用の助言は扱いません。
戦後の物価はどれだけ上がったのか。ここ数年の上がり方は、過去と比べてどうなのか。
1947年の物価を1とすると2025年は約21倍。2020年からの5年間の上昇12.0%は、1990年からの30年間の上昇11.5%を上回りました。
出典:総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数 長期時系列データ」
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
消費者物価指数は1947年の4.7から2025年の100へ|2つの系列で見る推移

80年近い指数の動きは、2025年を100とした折れ線で見ると、上がった時期と横ばいだった時期の区切りがはっきりします。1970年からは総合指数の線も重ねて、2つの系列の違いを並べています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
消費者物価指数は、家計が買う商品やサービスの価格をまとめ、基準年を100とした指数で表したものです。2026年8月に基準年が2020年から2025年に改定され、過去の値も2025年=100に換算した接続指数として公開されました。図の折れ線は、この接続指数の年平均を1947年から並べたものです。
戦後すぐから比べられるのは「持家の帰属家賃を除く総合」です。持家の帰属家賃とは、持ち家を借家とみなした場合の家賃のことで、この系列は全国で1947年から年平均があります。一方、ニュースで「消費者物価指数」と言うときの基本の指数である「総合」は1970年からの公表です。1947年からの比較は持家の帰属家賃を除く総合、1970年以降の比較は総合と、系列を分けて読む必要があります。
持家の帰属家賃を除く総合は、1947年の4.7から1974年に42.2となり、2025年に100に達しました。総合は1970年の27.6から2025年の100へ、約3.6倍です。総合は1994年に85.7、2013年に84.7で、この19年間はほぼ同じ水準でした。1998年の87.8を初めて上回ったのは2017年(88.1)です。なお、1962年以前の全国指数は、人口5万以上の市を対象とした全都市の指数です。
前年比で見る物価の推移|最高は1974年の23.2%、マイナスは12回

前年比は、1年ごとの棒を並べると、上昇の大きさと下落の年が一度に見えます。棒が下向きになる年がどこに集まっているかも、図の中で確かめられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
前年比は、その年の年平均の指数が前の年と比べて何%変わったかを示します。総合指数の前年比は1973年に11.7%、1974年に23.2%となり、1974年が1971年以降で最も高い値でした。図には、エネルギー白書が第一次石油ショックの発生年とする1973年と、消費税が3%で導入された1989年に縦線を置いています。出来事の年を目印として示したもので、数値との関係を示すものではありません。
前年比がマイナスだった年は、1971〜2025年で12回ありました。1995年、1999〜2003年、2005年、2009〜2011年、2016年、2021年です。最も低かったのは2009年の−1.4%で、マイナスの年はすべて1995年以降にあります。前年比が0.0%だった2004年、2007年、2012年、2020年はマイナスに数えていません。
戦後すぐの持家の帰属家賃を除く総合では、1948年の前年比が82.7%、1949年が32.0%でした。総合指数の前年比は2022年に2.5%、2023年に3.2%、2024年に2.7%、2025年に3.2%です。2023年の3.2%は、1991年(3.3%)以来32年ぶりの3%台でした。消費税の税率の変遷は、消費税の推移を図解した記事で扱っています。
年代ごとの物価の上がり方|1970年代9.0%から2000年代−0.3%へ

10年ごとの区切りで年平均の上昇率をそろえると、年代の違いを棒の長さで比べられます。1本だけ左に伸びる棒が、2000年代です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
年平均上昇率は、区切りの始点と終点の指数から、1年あたり平均で何%ずつ上がったかを計算した値です(幾何平均)。総合指数で計算すると、1970→1980年は年平均9.0%、1980→1990年は2.0%、1990→2000年は0.8%でした。2000→2010年は−0.3%、2010→2020年は0.5%、2020→2025年は2.3%です。
年平均の上昇率は1970年代の9.0%から年代ごとに小さくなり、2000年代はマイナスでした。1990年代半ばから2010年代前半にかけては、前年比がプラスとマイナスを行き来し、指数の水準も大きくは動いていません。2020年からの5年間の年平均2.3%は、1980年代の2.0%を上回る値です。
2020年からの5年間|30年分の上昇を上回った物価

直近の5年が長い目で見てどのくらいの幅なのかは、期間の長さが違う2本の棒を並べると比べやすくなります。5年の棒と30年の棒の長さを見比べてみてください。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
総合指数は2020年の89.3から2025年の100へと、5年間で12.0%上がりました。1990年の80.1から2020年の89.3までの30年間の上昇は11.5%です。直近5年間の上昇幅は、その前の30年間の上昇幅を上回りました。年ごとに見ると、2022年が2.5%、2023年が3.2%、2024年が2.7%、2025年が3.2%で、4年続けて2%を超えています。
生鮮食品を除く総合(いわゆるコア指数)の2025年の前年比は3.1%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合は3.0%でした。月ごとの最新値では、2025年基準の全国2026年8月分で総合指数が102.2、前年同月比は1.9%です。最新月の値は毎月更新されます。物価と賃金の動きの比較は、物価と賃金を比べた記事で扱っています。
食料とエネルギーの指数|2020→2025年の動き
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
費目のまとまりで見ると、食料の指数は2020年の79.5から2025年の100へ25.8%、エネルギーは81.3から100へ23.0%上がりました。いずれも同じ期間の総合の上昇(12.0%)より大きい幅です。エネルギーの指数は2022年に98.9まで上がり、2023年に93.0となった後、2025年に100となりました。食料の指数は2022年以降、毎年前の年を上回っています。
2025年に上がった費目|10大費目の前年比

2025年の上昇がどの費目で大きかったかは、10大費目の前年比を横棒で並べると見分けられます。総合の値を参考として一番上に置いています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
消費者物価指数は、品目を食料、住居、光熱・水道、家具・家事用品、被服及び履物、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽、諸雑費の10大費目に分けて集計しています。2025年平均の前年比で最も高かったのは食料の6.8%で、光熱・水道の3.6%が続きました。食料の中では穀類が21.9%上がり、10大費目では教育が−4.5%と唯一のマイナスでした。
前年比が総合(3.2%)を上回ったのは食料と光熱・水道の2費目で、残る7費目は1.0〜2.7%のプラスでした。費目別の値は、2025年平均について2020年基準で公表された前年比です。米の価格の長い推移は、米価の推移を図解した記事で扱っています。
楓のまとめ|戦後の物価を3つの数字で整理

ここまでの図解を並べると、長期の水準・年ごとの変化・直近5年の幅が、それぞれ違う数字で表れていることが確認できます。3つの観察事実に整理してみます。
「戦後の物価はどれだけ上がったのか」という問いには、比べる系列と期間によって複数の答え方があります。本記事では、1947年からの比較には持家の帰属家賃を除く総合、1970年以降の比較には総合を使い、指数の水準、前年比、年代別の上昇率、費目別の動きの4つの角度から整理しました。
同じ消費者物価指数でも、戦後の長い期間で見るか、直近5年の幅で見るかで、目に入る数字は約21倍と12.0%に分かれます。どの系列を使い、どの年からどの年までを比べているかを確かめることが、物価の数字を読むときの出発点になります。
よくある質問(FAQ)

物価指数の数字を読むときは、系列の名前、基準年、比べている期間の3点をセットで確認してください。同じ年の値でも、この3点が違うと数字が変わります。
Q1. 「総合」「生鮮食品を除く総合」「持家の帰属家賃を除く総合」は何が違うのですか?
総合は、指数の対象となるすべての品目を含む指数です。生鮮食品を除く総合(いわゆるコア指数)は天候などで価格が動きやすい生鮮食品を除いたもの、持家の帰属家賃を除く総合は持ち家を借家とみなした場合の家賃を除いたものです。全国の値を戦後すぐから比べられるのは持家の帰属家賃を除く総合で、1947年から年平均があります。総合の全国の値は1970年からです。
Q2. 以前見た指数の値と違うのはなぜですか?
総務省統計局は5年ごとに基準年を改定しています。2026年8月から2025年=100の2025年基準に切り替わり、過去の指数も2025年=100に換算した接続指数が2026年8月7日に公開されました。このため、2020年基準(2020年=100)で見た値とは数字が異なります。また前年比は各基準で公表された値を使う決まりのため、接続指数から計算し直した値と一致しない年があります。
Q3. 1947年の物価と今の物価を比べると、どのくらいの差がありますか?
持家の帰属家賃を除く総合で比べると、1947年の4.7に対して2025年は100で、約21倍です。1947年に100円だった買い物は、2025年の約2,100円にあたる計算になります。ただし、買われる品物の種類や品質は時代によって大きく変わるため、この換算は目安として示しています。
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