
卵の値段は、飼料、鶏の数、相場、店頭の4つの段階に分けて数字を並べると、どこで決まりどう動くかが見えてきます。総務省と農林水産省の統計で、東京の1パックの値段を25年分たどります。
卵の値段は、どのように決まるのでしょうか。店頭の値段は、配合飼料などの生産コストと卵を産む鶏の数を土台に、JA全農たまごが平日に発表する相場(東京Mサイズ基準値)を経てつけられます。総務省の小売物価統計調査では、東京都区部の卵1パック(10個入り)は2026年9月に324円で、1個あたり32.4円です。1パック10個の表示になった2002年7月以降で、最も高い値段です。
相場は短い期間に大きく動くことがあり、2023年6月から2024年1月までの半年で48.4%下がりました。同じ期間に、店頭の1パックの値段は1.6%の下落でした。本記事では、総務省「小売物価統計調査」、農畜産業振興機構(ALIC)が掲載するJA全農たまごの相場、農林水産省の畜産統計・鳥インフルエンザの発生状況・鶏卵の価格安定制度の資料をもとに、5つの図解と3つの表で卵の値段の決まり方を整理します。
卵の値段は、どのような仕組みで決まるのか。
飼料と鶏の数を土台に、JA全農たまごの相場を経て店頭の値段がつく。
- 01 飼料 9.4万円 配合飼料1トンの工場渡価格(2026年8月)
- 02 鶏の数 1.39億 卵を産む成鶏めすの羽数(2026年2月1日)
- 03 相場 298円 JA全農たまご 東京Mサイズ 1kg(2026年9月)
- 04 店頭 324円 東京都区部 1パック10個(2026年9月)
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
卵の値段が店頭に届くまで|飼料・鶏・相場・店頭の4段階

卵の値段が決まるまでの流れを、4つの段階に分けて並べました。上から飼料、鶏の数、相場、店頭の順で、点線の枠は相場の下支えの基準です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
1つめの段階は飼料です。農林水産省の資料は、卵の生産コストの約6割が飼料費だと説明しています。家畜の配合飼料の工場渡価格(全畜種の加重平均・税抜き)は、2026年8月に1トンあたり9万3,916円でした。2つめは鶏の数で、農林水産省の畜産統計によると、卵を産む採卵鶏の成鶏めす(6か月齢以上)は2026年2月1日現在で1億3,860万2,000羽です。
3つめの段階が相場です。JA全農たまごは、東京・大阪・名古屋・福岡の4地区で、LLからSSまでのサイズ別に荷受相場の基準値を平日に発表しています。農畜産業振興機構(ALIC)は、このうち東京のMサイズの基準値を鶏卵の卸売価格として毎月の資料に載せています。2026年9月の東京Mサイズ基準値は、1kgあたり298円(消費税を含まない値)でした。
4つめが店頭です。総務省の小売物価統計調査は、東京都区部などの店で売られている白色卵10個入りの値段を毎月調べており、2026年9月は1パック324円でした。相場は1kgあたり、店頭は1パックあたりの値段で、段階によって単位が違います。Mサイズの重さとサイズ混合の1パックは対応しないため、本記事では2つを換算せず、別々の目盛りで見ていきます。
相場はサイズによっても違います。2026年11月2日に発表された東京の基準値を並べると、MSサイズが340円で最も高く、SSサイズが245円で最も低い値でした。
東京のサイズ別の基準値(2026年11月2日発表・円/kg)
| LL | L | M | MS | S | SS |
|---|---|---|---|---|---|
| 310 | 315 | 320 | 340 | 315 | 245 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
東京の1パックの値段|2002年からの推移と2026年の最高値

東京の1パックの値段を、毎月の線でたどっています。2018年1月の点線を境に、調べている卵の種類が変わるため、線を分けています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
小売物価統計調査で卵の値段が1パック10個入りの表示になったのは2002年7月で、それより前は1kgあたりの値段でした。単位が違うため、本記事では2002年6月以前の値を使っていません。2002年7月からはLサイズの10個入り、2018年1月からはサイズ混合の10個入りを調べています。Lサイズの期間の最高は2005年3月の269円、サイズ混合の期間の最低は2021年1月の219円です。
年平均で見ると、2019年222.7円、2020年223.2円、2021年228.2円、2022年238.8円のあと、2023年は297.1円に上がりました。2024年は285.8円、2025年は307.5円、2026年1〜9月は318.9円です。2022年の平均から2026年1〜9月の平均までに80.1円高くなり、1個あたりでは約8円の差です。2026年9月の324円は、2002年7月以降の291か月で最も高い値でした。
同じ小売物価統計調査で調べている主食の値段の動きは、米の小売価格の75年の推移で図解しています。食料を含む物価全体の動きは、消費者物価指数の長期の推移で確かめられます。
2003年からの年平均を、次の見出しで見る相場の年平均と並べて表にまとめます。
東京の卵の値段の年平均(2003〜2026年)
| 年 | 店頭 (円/パック) | 相場 (円/kg) |
|---|---|---|
| 2003年 | 187.0 | 150.8 |
| 2004年 | 199.6 | 172.7 |
| 2005年 | 231.0 | 204.4 |
| 2006年 | 213.7 | 183.5 |
| 2007年 | 210.6 | 168.5 |
| 2008年 | 226.7 | 193.4 |
| 2009年 | 217.4 | 174.5 |
| 2010年 | 219.4 | 186.6 |
| 2011年 | 228.3 | 195.6 |
| 2012年 | 213.3 | 179.0 |
| 2013年 | 221.2 | 194.1 |
| 2014年 | 243.8 | 221.9 |
| 2015年 | 249.4 | 228.0 |
| 2016年 | 242.5 | 205.4 |
| 2017年 | 245.2 | 206.7 |
| 2018年 | 230.3 | 180.3 |
| 2019年 | 222.7 | 172.4 |
| 2020年 | 223.2 | 170.5 |
| 2021年 | 228.2 | 217.2 |
| 2022年 | 238.8 | 215.1 |
| 2023年 | 297.1 | 306.4 |
| 2024年 | 285.8 | 226.9 |
| 2025年 | 307.5 | 323.7 |
| 2026年(1〜9月) | 318.9 | 309.4(1〜10月) |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
相場と店頭のずれ|相場は半年で約半分、店頭は1.6%減

相場と店頭の値段を、同じ時間の軸で上下に並べました。上が相場、下が店頭で、単位が違うため目盛りを分けています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
相場は2023年に入って上がり、4月と5月に1kgあたり350円をつけました。ALICが掲載している1990年1月以降の月平均で、最も高い値です。店頭の1パックが最も高くなったのは、相場の最高より1〜2か月あとの2023年6月で、311円でした。
その後、相場は2023年6月の349円から2024年1月の180円まで、半年で48.4%下がりました。同じ期間に、店頭の1パックは311円から306円へ1.6%下がっただけでした。店頭の値段が下がり続けたのは2024年9月の274円までで、2023年6月と比べると11.9%の下落です。
2025年は相場の年平均が323.7円で、1990年以降で最も高い年になりました。同じ年の店頭の年平均は307.5円です。2つの線を並べると、店頭の値段は相場の動きをそのままなぞらず、小さく、遅れて動いていることが見えてきます。店頭の値段が店ごとにどう決められるかの内訳には立ち入らず、本記事では2つの統計の動きを並べるところまでにします。
相場が動くとき|鶏の数・鳥インフルエンザ・季節・飼料

鳥インフルエンザの規模と、卵を産む鶏の数を並べています。上の棒は秋から翌春までのシーズンの合計、下の点は毎年2月1日の数です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
相場が動く背景について、農林水産省の資料は、鶏卵の生産が「卵価上昇→増羽→供給過剰→卵価低下→減羽→供給減少→卵価上昇」という6年周期のエッグサイクルで変動すると説明しています。卵を産む鶏の数は、供給の大きさを表す数字の1つです。
2022年秋から2023年春のシーズンには、家きんの鳥インフルエンザが84事例発生し、約1,771万羽が殺処分の対象になりました。農林水産省の資料に載る2020〜21年以降の6シーズンで、最も多い数です。翌2023年2月1日の成鶏めすの数は1億2,857万9,000羽で、前年より6.3%少なくなりました。殺処分の対象には肉用鶏なども含まれるため、2つの数は単純には比べられません。
2026年2月1日の成鶏めすは1億3,860万2,000羽で、2024年より6.8%多くなっています。2025年は農林業センサスの実施年にあたり、採卵鶏の調査は行われていません。2025年秋から2026年春のシーズンの鳥インフルエンザは、24事例・約576万羽でした。
季節と飼料|相場は12月に高く、1月と夏に低い
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
相場には季節による動きもあります。2020年より前の10年間(2010〜2019年)について月ごとの平均をとると、1月の171円が最も低く、12月の234円が最も高くなりました。7月と8月も176円と低く、年末に高く、年明けと夏に低いという季節の形が見えます。農林水産省の資料も、夏の低需要期には需要が下がり、卵の値段が下がると説明しています。
ALICの「畜産の情報」2026年10月号は、2026年8月の相場(1kgあたり292円)について、全国農業協同組合連合会の資料を引き、暑さによる卵重の低下などが見られたことと、量販向け・業務向けともに需要の少ない時期に入ったことを伝えています。
飼料の値段も、相場の背景にある数字です。配合飼料の工場渡価格(全畜種の加重平均)は、2020年の平均が1トンあたり6万580円、2023年の平均が8万9,191円で、1.47倍になりました。2026年1〜8月の平均は9万955円です。とうもろこしなど飼料の原料の輸入は、品目別に見た日本の食料輸入で図解しています。
下がりすぎを防ぐ仕組み|補塡基準価格240円と空舎延長

価格が下がったときの基準になる値段を、年度ごとに表にしました。2つの基準価格は、どちらも鶏卵1kgあたりの卸売の段階の値段です。
鶏卵の補塡基準価格と安定基準価格(2011〜2026年度)
| 年度 | 補塡基準価格 (円/kg) | 安定基準価格 (円/kg) |
|---|---|---|
| 2011年度 平成23年度 | 183 | 156 |
| 2012年度 平成24年度 | 185 | 158 |
| 2013年度 平成25年度 | 186 | 159 |
| 2014年度 平成26年度 | 187 | 166 |
| 2015年度 平成27年度 | 188 | 167 |
| 2016年度 平成28年度 | 189 | 169 |
| 2017年度 平成29年度 | 187 | 165 |
| 2018年度 平成30年度 | 185 | 163 |
| 2019年度 令和元年度 | 185 | 163 |
| 2020年度 令和2年度 | 183 | 161 |
| 2021年度 令和3年度 | 181 | 159 |
| 2022年度 令和4年度 | 181 | 159 |
| 2023年度 令和5年度 | 209 | 190 |
| 2024年度 令和6年度 | 222 | 202 |
| 2025年度 令和7年度 | 230 | 207 |
| 2026年度 令和8年度 | 240 | 218 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
国の鶏卵生産者経営安定対策事業には、相場が下がったときの2つの仕組みがあります。1つは価格差補塡で、毎月の標準取引価格が補塡基準価格を下回ると、その差額(補塡基準価格と安定基準価格の差額が上限)の9割が補塡されます。もう1つは成鶏更新・空舎延長事業で、日々の標準取引価格が安定基準価格を下回ったとき、成鶏を出荷してから60日以上鶏舎を空ける取り組みに奨励金が交付されます。
2026年度の補塡基準価格は1kgあたり240円、安定基準価格は218円です。補塡基準価格は2022年度の181円から2026年度の240円まで、4年で59円上がりました。2026年度の補塡基準価格は、2020〜2025年の標準取引価格の平均240.81円に、生産コストの変化率1.050と、夏の低需要期の平均低落率0.951をかけて算定されています。
2011〜2024年度のうち、事業が発動しなかったのは2022年度だけでした。この事業の政策目標は、卸売価格の変動幅を平均卸売価格の±25%以内にすることです。2つの基準価格は卸売の段階の値段で、店頭の卵の値段を決めるものではありません。
楓のまとめ|卵の値段は4つの段階を経て、店頭ではゆっくり動く

4つの段階と25年の推移を並べると、相場と店頭の動き方の違いが見えてきます。3つの観察事実に整理します。
「卵の値段はどう決まるか」という問いに対して、本記事の図解は、飼料と鶏の数を土台にJA全農たまごの相場を経て店頭の値段がつく流れと、その中で相場と店頭が違う速さで動いてきたことを示してきました。単位と期間に気をつけながら、観察事実として整理しておきます。
3つの観察事実を重ねると、相場は年の中でも年をまたいでも大きく動き、店頭の値段は同じ時期に小さく、遅れて動いてきたという形が見えてきます。東京の1パックは2026年9月に324円となり、1パック10個の表示になってから最も高い水準にあります。
よくある質問(FAQ)

卵の値段の統計を読むときは、相場か店頭か、1kgか1パックか、どの期間の卵かの3点を確認してください。
Q1. スーパーの卵の値段は、相場と同じですか?
同じではありません。相場はJA全農たまごの荷受相場の基準値で、卸売の段階の値段です。東京Mサイズの基準値は1kgあたり・消費税を含まない値で、2026年9月は298円でした。店頭の値段は総務省の小売物価統計調査で1パック10個入りの値段として調べられ、東京都区部の2026年9月は324円です。2023年6月から2024年1月には、相場が48.4%下がった間に店頭は1.6%の下落で、同じ時期でも動き方が違いました。
Q2. 鳥インフルエンザが出たあと、相場はどう動きましたか?
2022年秋から2023年春のシーズンには、家きんで84事例が発生し、約1,771万羽が殺処分の対象になりました。相場(東京Mサイズ基準値)は2022年9月の223円から上がり、2023年4月と5月に350円をつけています。2023年2月1日の成鶏めすの数は、前年より6.3%少ない1億2,857万9,000羽でした。相場は鶏の数のほかに季節や需要でも動くため、ここでは同じ時期の数字を並べるにとどめます。
Q3. 昔の卵の値段と比べられますか?
小売物価統計調査で比べるときは、期間に注意が必要です。卵の値段は2002年7月に1kgあたりから1パック10個入りの表示に変わり、2018年1月にはLサイズからサイズ混合の卵に変わりました。2002年6月以前の1kgあたりの値段は、1パックの値段とは単位が違います。2018年の前後も調べている卵が違うため、比べるときは同じ種類の卵の期間どうしで見るのが確実です。
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