
市町村ごとの治安を見るときは、件数の多い順と、人口あたりの発生率の高い順を分けて見るのが近道です。神奈川県は、件数の1位が横浜市、発生率の1位が箱根町と、指標によって顔ぶれがまったく変わる県です。
神奈川県の刑法犯認知件数は、2025年(令和7年)の12月末確定値で50,059件でした。前年の45,716件から4,343件、率にして9.5%の増加です。1年間を時間に直すと、県内ではおよそ10分半に1件のペースで刑法犯が認知されている計算になります。
本記事では、神奈川県警察が公表した市区町村別の認知件数(令和7年確定値)と、令和7年国勢調査の速報人口を組み合わせて、県内33市町村の犯罪件数と人口千人あたりの発生率を地図とランキングで整理します。政令市の横浜市・川崎市・相模原市は市単位に統合し、件数で見るか発生率で見るかで像がどう変わるかを中立に観察していきます。
神奈川県の犯罪は、市町村ごとにどれくらい違う?
件数で見ると横浜市など大都市が上位だが、人口あたりの発生率では箱根町など別の市町が上位に来て、顔ぶれが入れ替わる。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
神奈川県全体の犯罪はどう動いてきたか

まず県全体の流れを押さえておきます。市町村別の細かい話に入る前に、この11年で件数がどう動いてきたかを見ておくと、いまの水準の意味がつかみやすくなります。
神奈川県の刑法犯認知件数は、2015年(平成27年)の61,664件から減少が続き、2021年(令和3年)には33,252件まで下がりました。その2021年を底に、2025年まで4年連続で増加しています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の50,059件は、2022年以降の増加が積み重なって5万件台に戻った水準です。ただし、11年前の2015年(61,664件)は下回っています。長い減少のあとに直近の増加が重なっている、という二つの動きが同時に見える局面です。
認知件数が多いのはどの市町村か

ここからが市町村別の話です。最初は単純に、件数そのものが多いのはどこか、を見ていきます。件数は、人口の多さがそのまま反映されやすい指標です。
2025年の認知件数を市町村別に見ると、最も多いのは横浜市の18,925件でした。次いで川崎市8,256件、相模原市4,530件、藤沢市2,463件と続きます。件数の上位は、いずれも人口規模の大きい市で占められています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
件数の偏りを構成で見ると、横浜市と川崎市の2市だけで27,181件と、県全体の約54%を占めます。政令市3市まで広げると31,711件で約63%です。残りの30市町村の合計は18,029件で、件数という指標が人口規模を強く映すことが分かります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が高いのはどの市町村か

件数を人口で割った発生率に切り替えると、地図の色ががらりと変わります。どの地域で人口あたりの発生率が高いのかを、色の濃淡で確認してみてください。
人口千人あたりの発生率で並べ替えると、上位の顔ぶれが大きく変わります。最も高いのは箱根町の9.54で、小田原市8.40、大和市7.47、平塚市・厚木市の6.72と続きます。件数では上位に入らなかった県西部や県央の市町が、発生率では上位に並びます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
地図では、箱根町・小田原市など県西部の一部と、大和市・座間市・海老名市など県央部で色が濃くなっています。一方、三浦半島や県西部の山あいの町村は薄い色にまとまっており、同じ県の中でも人口あたりの発生率に地域差があることが読み取れます。
「件数」と「発生率」で顔ぶれが入れ替わる

この記事でいちばん見てほしいのがここです。件数の順位と発生率の順位を並べると、両方の上位5に入るのは大和市だけで、あとは顔ぶれがほぼ入れ替わります。
件数1位の横浜市は、発生率では5.04で、33市町村のなかではおよそ中位にあたります。逆に発生率1位の箱根町は、件数では98件で上位には入りません。規模で見るか密度で見るかで、上位の顔ぶれがほとんど入れ替わります。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
両方のランキングで上位5に入るのは大和市です。件数では5位(1,840件)、発生率では3位(7.47)で、規模と密度の両面で高い水準にあります。件数7位の小田原市も発生率では2位に入り、規模の割に率が高い市があることも読み取れます。
ここまでは上位を中心に見てきましたが、お住まいの市町村が県内で何位なのかは、全体の一覧で確認できます。次の表に、全33市町村の認知件数の多い順と、人口千人あたりの発生率の高い順を並べました。タブで地域ごとの表示にも切り替えられます。
神奈川県 全33市町村 犯罪ランキング一覧(2025年)
左は認知件数の多い順、右は人口千人あたりの発生率の高い順。お住まいの市町村が県内で何位かを、件数と発生率の両方で確認できます。同じ値は同順位です。
| 順位 | 市町村 | 件数 | 発生率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 横浜市 | 18,925 | 5.04 |
| 2 | 川崎市 | 8,256 | 5.29 |
| 3 | 相模原市 | 4,530 | 6.36 |
| 4 | 藤沢市 | 2,463 | 5.55 |
| 5 | 大和市 | 1,840 | 7.47 |
| 6 | 平塚市 | 1,734 | 6.72 |
| 7 | 小田原市 | 1,554 | 8.40 |
| 8 | 厚木市 | 1,498 | 6.72 |
| 9 | 横須賀市 | 1,348 | 3.69 |
| 10 | 茅ヶ崎市 | 1,343 | 5.49 |
| 11 | 海老名市 | 890 | 6.28 |
| 12 | 鎌倉市 | 840 | 4.94 |
| 13 | 座間市 | 814 | 6.17 |
| 14 | 秦野市 | 714 | 4.41 |
| 15 | 伊勢原市 | 506 | 5.04 |
| 16 | 綾瀬市 | 455 | 5.49 |
| 17 | 逗子市 | 296 | 5.36 |
| 18 | 寒川町 | 271 | 5.64 |
| 19 | 三浦市 | 191 | 4.94 |
| 20 | 南足柄市 | 189 | 4.83 |
| 21 | 愛川町 | 158 | 4.04 |
| 22 | 二宮町 | 150 | 5.67 |
| 23 | 大磯町 | 119 | 3.90 |
| 24 | 大井町 | 111 | 6.46 |
| 25 | 開成町 | 105 | 5.65 |
| 26 | 湯河原町 | 102 | 4.71 |
| 27 | 箱根町 | 98 | 9.54 |
| 28 | 葉山町 | 90 | 3.00 |
| 29 | 松田町 | 55 | 5.47 |
| 30 | 山北町 | 38 | 4.30 |
| 31 | 中井町 | 32 | 3.68 |
| 32 | 真鶴町 | 20 | 3.35 |
| 33 | 清川村 | 5 | 1.77 |
| 順位 | 市町村 | 発生率 | 件数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 箱根町 | 9.54 | 98 |
| 2 | 小田原市 | 8.40 | 1,554 |
| 3 | 大和市 | 7.47 | 1,840 |
| 4 | 平塚市 | 6.72 | 1,734 |
| 4 | 厚木市 | 6.72 | 1,498 |
| 6 | 大井町 | 6.46 | 111 |
| 7 | 相模原市 | 6.36 | 4,530 |
| 8 | 海老名市 | 6.28 | 890 |
| 9 | 座間市 | 6.17 | 814 |
| 10 | 二宮町 | 5.67 | 150 |
| 11 | 開成町 | 5.65 | 105 |
| 12 | 寒川町 | 5.64 | 271 |
| 13 | 藤沢市 | 5.55 | 2,463 |
| 14 | 茅ヶ崎市 | 5.49 | 1,343 |
| 14 | 綾瀬市 | 5.49 | 455 |
| 16 | 松田町 | 5.47 | 55 |
| 17 | 逗子市 | 5.36 | 296 |
| 18 | 川崎市 | 5.29 | 8,256 |
| 19 | 横浜市 | 5.04 | 18,925 |
| 19 | 伊勢原市 | 5.04 | 506 |
| 21 | 鎌倉市 | 4.94 | 840 |
| 21 | 三浦市 | 4.94 | 191 |
| 23 | 南足柄市 | 4.83 | 189 |
| 24 | 湯河原町 | 4.71 | 102 |
| 25 | 秦野市 | 4.41 | 714 |
| 26 | 山北町 | 4.30 | 38 |
| 27 | 愛川町 | 4.04 | 158 |
| 28 | 大磯町 | 3.90 | 119 |
| 29 | 横須賀市 | 3.69 | 1,348 |
| 30 | 中井町 | 3.68 | 32 |
| 31 | 真鶴町 | 3.35 | 20 |
| 32 | 葉山町 | 3.00 | 90 |
| 33 | 清川村 | 1.77 | 5 |
政令市(横浜・川崎・相模原)の市町村(3市町村)
順位はいずれも県内33市町村の中での順位です。
| 県内順位(件数) | 市町村 | 件数 | 発生率 | 県内順位(率) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 横浜市 | 18,925 | 5.04 | 19 |
| 2 | 川崎市 | 8,256 | 5.29 | 18 |
| 3 | 相模原市 | 4,530 | 6.36 | 7 |
横須賀三浦の市町村(5市町村)
順位はいずれも県内33市町村の中での順位です。
| 県内順位(件数) | 市町村 | 件数 | 発生率 | 県内順位(率) |
|---|---|---|---|---|
| 9 | 横須賀市 | 1,348 | 3.69 | 29 |
| 12 | 鎌倉市 | 840 | 4.94 | 21 |
| 17 | 逗子市 | 296 | 5.36 | 17 |
| 19 | 三浦市 | 191 | 4.94 | 21 |
| 28 | 葉山町 | 90 | 3.00 | 32 |
県央の市町村(7市町村)
順位はいずれも県内33市町村の中での順位です。
| 県内順位(件数) | 市町村 | 件数 | 発生率 | 県内順位(率) |
|---|---|---|---|---|
| 5 | 大和市 | 1,840 | 7.47 | 3 |
| 8 | 厚木市 | 1,498 | 6.72 | 4 |
| 11 | 海老名市 | 890 | 6.28 | 8 |
| 13 | 座間市 | 814 | 6.17 | 9 |
| 16 | 綾瀬市 | 455 | 5.49 | 14 |
| 21 | 愛川町 | 158 | 4.04 | 27 |
| 33 | 清川村 | 5 | 1.77 | 33 |
湘南の市町村(8市町村)
順位はいずれも県内33市町村の中での順位です。
| 県内順位(件数) | 市町村 | 件数 | 発生率 | 県内順位(率) |
|---|---|---|---|---|
| 4 | 藤沢市 | 2,463 | 5.55 | 13 |
| 6 | 平塚市 | 1,734 | 6.72 | 4 |
| 10 | 茅ヶ崎市 | 1,343 | 5.49 | 14 |
| 14 | 秦野市 | 714 | 4.41 | 25 |
| 15 | 伊勢原市 | 506 | 5.04 | 19 |
| 18 | 寒川町 | 271 | 5.64 | 12 |
| 22 | 二宮町 | 150 | 5.67 | 10 |
| 23 | 大磯町 | 119 | 3.90 | 28 |
県西の市町村(10市町村)
順位はいずれも県内33市町村の中での順位です。
| 県内順位(件数) | 市町村 | 件数 | 発生率 | 県内順位(率) |
|---|---|---|---|---|
| 7 | 小田原市 | 1,554 | 8.40 | 2 |
| 20 | 南足柄市 | 189 | 4.83 | 23 |
| 24 | 大井町 | 111 | 6.46 | 6 |
| 25 | 開成町 | 105 | 5.65 | 11 |
| 26 | 湯河原町 | 102 | 4.71 | 24 |
| 27 | 箱根町 | 98 | 9.54 | 1 |
| 29 | 松田町 | 55 | 5.47 | 16 |
| 30 | 山北町 | 38 | 4.30 | 26 |
| 31 | 中井町 | 32 | 3.68 | 30 |
| 32 | 真鶴町 | 20 | 3.35 | 31 |
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率が低いのはどの市町村か

最後に、発生率が低い側も見ておきます。あわせて、発生率という指標の分母が何なのか、という計算の仕組みも押さえておくと、読み間違いを防げます。
人口千人あたりの発生率が最も低いのは清川村の1.77で、葉山町3.00、真鶴町3.35、中井町3.68と続きます。下位5位には人口36万人超の横須賀市(3.69)も入っており、人口規模の大きい市の率が高いとは限りません。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
発生率の分母は、国勢調査の定住人口です。箱根町のように観光などで来訪者が多い地域では、来訪者に関わる事案も約1万人の定住人口で割るため、率が高く出やすい計算構造があります。これは地域の評価ではなく、指標の分母がどう決まっているかという計算の説明です。
楓のまとめ|同じ県でも、見る指標で治安の地図は変わる

ここまでの観察を3つに整理します。件数・発生率・指標の仕組み、それぞれで見えたことを並べると、この記事の全体像がつかめます。
3つの観察を重ねると、「神奈川県のどこで犯罪が多いか」という問いには、件数で答えるか発生率で答えるかで違う地図が現れることが分かります。件数なら大都市、人口あたりの発生率なら県西部の観光地や県央の中規模市が上位に来て、見る指標によって治安の像が変わります。どちらか一方だけでなく、規模と密度の両方を並べて見ることが、データを正確に読む手がかりになります。
よくある質問(FAQ)

市町村別の治安データを読むときに迷いやすい点を、3つにまとめました。数値の確度、政令市の区の扱い、件数と発生率の違いについてです。
Q1. この件数は確定値ですか?
刑法犯認知件数は令和7年(2025年)の12月末確定値で、神奈川県警察が2026年2月に公表したものです。ただし、犯罪率の計算に使う人口は令和7年国勢調査の速報値(神奈川県の集計)で、総務省統計局が公表する速報値とは相違する場合があると原資料に明記されています。件数は確定値、率の分母となる人口は速報値、という組み合わせで算出しています。
Q2. 横浜市・川崎市の区ごとの数字はありますか?
神奈川県警察のデータには、横浜市18区・川崎市7区・相模原市3区の内訳も含まれています。本記事では県全体の傾向を見るため、区を合計して市単位で集計しています。区単位で件数が最も多いのは川崎市川崎区の2,489件です。
Q3. 「件数」と「発生率」はどう違いますか?
件数は、その市町村で1年間に認知された刑法犯の総数です。発生率(人口千対)は、件数を定住人口で割って1,000を掛けた値で、人口規模の影響を取り除いて比べられます。ただし分母は定住人口のため、観光などで来訪者が多い地域では高く出やすい性質があります。
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