
「高齢ドライバーの事故は増えているのか」という問いは、事故の件数で見るか、免許を持っている人の数で割った率で見るかで、図の形が変わります。同じ統計を2通りに割って、両方を並べてみます。
高齢ドライバーの事故が報じられる機会は多く、「増えている」という感覚を持つ方は少なくありません。警察庁の統計で2015年から2025年までの11年を年齢層別にたどると、一般原付以上の運転者が第1当事者となった交通事故は、全年齢で510,050件から264,348件へ、およそ半分に減っています。その11年のなかで、85歳以上だけは4,241件から4,584件へと2015年を上回りました。
一方、同じ事故を免許保有者10万人当たりに直すと、別の線が見えます。75歳以上は2015年の701.8件から2025年の382.4件へ、45.5%減りました。全年齢の620.9件から324.3件という減り方と、大きくは変わらないペースです。件数で見るか、免許を持っている人の数で割って見るかで、同じ年齢層の位置づけが変わります。
2025年の382.4件という数字は、75歳以上の免許保有者およそ262人に1人が、1年のうちに1件の事故の第1当事者になっているという意味になります(100,000 ÷ 382.4 = 261.5)。同じ計算を16〜19歳の992.2件に当てはめると、およそ101人に1人です(100,000 ÷ 992.2 = 100.8)。
本記事では、警察庁「令和7年中の交通事故の発生状況」の表3-1-1・表3-1-2と、警察庁「運転免許統計 令和7年版」をもとに、年齢層別の事故件数・免許保有者10万人当たり事故件数・運転免許保有者数の3つを図解で並べます。死亡事故の統計は分母も分子も異なるため、記事の後半で別枠として扱います。
高齢ドライバーの事故は、増えているのだろうか。
件数はほぼ横ばい。免許を持つ人の数で割ると45.5%減。
本記事は楓が調査・編集しています。掲載情報は執筆時点のものです。数値・制度・サービス内容は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
事故件数で見た11年|85歳以上だけが2015年を上回る

件数の変化は、年齢層ごとに2015年を100とした指数に直して並べると、どこが大きく減り、どこが減っていないかを1本の基準線で見分けられます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
警察庁の表3-1-2は、一般原付以上運転者が第1当事者となった交通事故の件数を、16〜19歳から85歳以上までの15区分で示しています。2015年と2025年を比べると、40〜44歳は50,835件から18,692件(指数36.8)、35〜39歳は43,729件から16,616件(指数38.0)で、働き盛りの層ほど減り方が大きくなっています。
指数が100を超えたのは、15区分のうち85歳以上の1つだけでした。件数は4,241件から4,584件で、指数は108.1です。75〜79歳は18,652件から17,615件(指数94.4)、80〜84歳は10,654件から9,734件(指数91.4)と、100には届かないものの、全年齢の指数51.8とは離れた位置にあります。全年齢が半分になった11年のなかで、75歳以上の3区分だけがほぼ元の水準にとどまっています。
再掲区分の75歳以上で見ると、2015年の33,547件に対して2025年は31,933件で、指数は95.2です。ただしこの11年は一本調子ではありません。2021年の25,530件が底で、そこから2025年までに6,403件、25.1%戻っています。2015年比では4.8%減、2021年比では25.1%増という2つの数字が、同じ系列から同時に出てきます。
なお、表3-1-2の「一般原付以上運転者」は自動車・自動二輪車・一般原動機付自転車の運転者を指し、特定小型原動機付自転車(電動キックボード等)を含みません。ただし2023年(令和5年)だけは特定小型原動機付自転車を含む集計です。2023年に多くの年齢層で値がわずかに上向いていますが、この年だけ集計の範囲が異なる点を併せて見る必要があります。
免許を持つ人の数で割ると、線の形が変わる

同じ事故を、免許を持っている人の数で割ってみます。分子はさきほどとまったく同じで、分母だけが変わる図です。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
表3-1-1は、表3-1-2と同じ事故を、各年12月末現在の運転免許保有者数10万人当たりに直した表です。分子は同じで、分母だけが違います。全年齢では2015年の620.9件から2025年の324.3件へ、11年で47.8%減りました。
75歳以上は701.8件から382.4件で45.5%減、2015年を100とすると54.5です。85歳以上は811.3件から464.1件、65〜69歳は510.5件から287.8件でした。件数では2015年を上回っていた85歳以上も、免許保有者10万人当たりで見ると全年齢と同じように下がっています。
6本の線を重ねると、最上部を大きく下りてくるのは16〜19歳です。1,888.8件から992.2件へ、11年で47.5%減りました。20〜24歳は1,144.9件から542.2件です。75歳以上と85歳以上の線は、この2本より下、全年齢の線のすぐ上を、ほぼ平行に下りていきます。
図の中の縦の破線は、2022年5月に運転技能検査が導入された年を示しています。制度の施行年を並べて置いただけで、事故の増減の原因として示したものではありません。75歳以上の免許保有者10万人当たり事故件数は、2021年418.6件、2022年402.5件、2023年416.5件と推移しています。
2025年の断面|年齢層別の率はU字を描く

推移ではなく、2025年の1年だけを取り出して年齢層を横に並べます。同じ数字から、また違う形が出てきます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
2025年の免許保有者10万人当たり交通事故件数を15の年齢区分で横に並べると、左端の16〜19歳が992.2件で最も高く、そこから下がって40〜44歳の268.2件・45〜49歳の268.3件で底になります。そこから年齢とともに緩やかに上がり、85歳以上は464.1件です。
全年齢の324.3件を横線で重ねると、これを上回るのは16〜19歳・20〜24歳・25〜29歳と、75〜79歳・80〜84歳・85歳以上の6区分でした。両端が高く、中央が低いU字の形になります。70〜74歳の315.4件は、全年齢をわずかに下回る位置にあります。
2025年に最も高い16〜19歳の992.2件は、75歳以上の382.4件の2.59倍です。85歳以上の464.1件を、最も低い40〜44歳の268.2件と比べると1.73倍になります。年齢層ごとの差は、どちらの端を基準に取るかで見え方が変わります。
この図は、どの年齢層が危ないかを示すものではありません。免許を持っている人の数で割ったときに、事故の第1当事者となった件数がどの位置にあるかという観測値です。走行距離・運転の頻度・運転する時間帯や道路の種類は、この統計の分母には含まれていません。
事故に占める割合と、免許保有者に占める割合

「高齢者の事故の割合が増えた」という言い方と、「高齢の免許保有者が増えた」という言い方を、同じ図の中に並べます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
事故件数に占める75歳以上の割合は、2015年が33,547件 ÷ 510,050件で6.6%、2025年が31,933件 ÷ 264,348件で12.1%です。11年でおよそ1.8倍になりました。
運転免許保有者に占める75歳以上の割合は、2015年の5.8%から2025年の10.2%へ上がっています。こちらもおよそ1.8倍です。2本の棒は、どちらもほぼ同じ倍率で並んで上がっています。
実数でも確かめられます。運転免許保有者数の総数は2018年(平成30年)の82,314,924人がピークで、以降は減っています。その中で75歳以上は2024年末の7,897,762人から2025年末の8,350,427人へ5.7%増、85歳以上は890,102人から987,713人へ11.0%増となりました。75歳以上の免許保有者は、この11年でおよそ1.75倍です。
この2つの割合が並んで動いていることは、図から読み取れる観測事実です。一方が他方の原因であるかどうかは、この統計だけでは判断できません。本記事はそこには踏み込まず、2本の棒が並んで上がっている形だけを示します。
3つの指標を切り替えて確かめる

率・件数・免許保有者数の3つを、同じ年齢区分でタブを切り替えながら見られるようにしました。どのタブの数字も、すべてページの中に置いてあります。
| 年齢層 | 2015年 | 2025年 | 指数 |
|---|---|---|---|
| 16〜19歳 | 1,888.8 | 992.2 | 52.5 |
| 20〜24歳 | 1,144.9 | 542.2 | 47.4 |
| 25〜29歳 | 814.1 | 392.4 | 48.2 |
| 30〜34歳 | 616.7 | 313.3 | 50.8 |
| 35〜39歳 | 554.7 | 274.6 | 49.5 |
| 40〜44歳 | 547.8 | 268.2 | 49.0 |
| 45〜49歳 | 528.7 | 268.3 | 50.7 |
| 50〜54歳 | 497.8 | 283.8 | 57.0 |
| 55〜59歳 | 516.6 | 294.2 | 56.9 |
| 60〜64歳 | 522.8 | 291.1 | 55.7 |
| 65〜69歳 | 510.5 | 287.8 | 56.4 |
| 70〜74歳 | 597.6 | 315.4 | 52.8 |
| 75〜79歳 | 662.0 | 348.7 | 52.7 |
| 80〜84歳 | 740.0 | 421.2 | 56.9 |
| 85歳以上 | 811.3 | 464.1 | 57.2 |
| 全年齢 | 620.9 | 324.3 | 52.2 |
| (再掲)65歳以上 | 588.0 | 334.6 | 56.9 |
| (再掲)70歳以上 | 650.1 | 355.0 | 54.6 |
| (再掲)75歳以上 | 701.8 | 382.4 | 54.5 |
| (再掲)80歳以上 | 759.0 | 434.1 | 57.2 |
一般原付以上運転者(第1当事者)の免許保有者10万人当たり交通事故件数。指数は2015年を100とした値です。
| 年齢層 | 2015年 | 2025年 | 指数 |
|---|---|---|---|
| 16〜19歳 | 18,412 | 7,568 | 41.1 |
| 20〜24歳 | 54,547 | 23,798 | 43.6 |
| 25〜29歳 | 47,206 | 20,902 | 44.3 |
| 30〜34歳 | 42,356 | 17,420 | 41.1 |
| 35〜39歳 | 43,729 | 16,616 | 38.0 |
| 40〜44歳 | 50,835 | 18,692 | 36.8 |
| 45〜49歳 | 43,558 | 21,125 | 48.5 |
| 50〜54歳 | 37,092 | 25,971 | 70.0 |
| 55〜59歳 | 34,871 | 23,590 | 67.6 |
| 60〜64歳 | 36,816 | 20,683 | 56.2 |
| 65〜69歳 | 38,851 | 17,802 | 45.8 |
| 70〜74歳 | 28,153 | 18,187 | 64.6 |
| 75〜79歳 | 18,652 | 17,615 | 94.4 |
| 80〜84歳 | 10,654 | 9,734 | 91.4 |
| 85歳以上 | 4,241 | 4,584 | 108.1 |
| 全年齢 | 510,050 | 264,348 | 51.8 |
| (再掲)65歳以上 | 100,551 | 67,922 | 67.5 |
| (再掲)70歳以上 | 61,700 | 50,120 | 81.2 |
| (再掲)75歳以上 | 33,547 | 31,933 | 95.2 |
| (再掲)80歳以上 | 14,895 | 14,318 | 96.1 |
一般原付以上運転者(第1当事者)の交通事故件数。指数が100を超えた区分を朱で示しています。
| 年齢層 | 保有者数(人) | 構成率(%) |
|---|---|---|
| 16〜19歳 | 762,731 | 0.9 |
| 20〜24歳 | 4,388,849 | 5.4 |
| 40〜44歳 | 6,969,638 | 8.6 |
| 50〜54歳 | 9,150,903 | 11.2 |
| 65〜69歳 | 6,185,504 | 7.6 |
| 70〜74歳 | 5,766,408 | 7.1 |
| 75〜79歳 | 5,051,729 | 6.2 |
| 80〜84歳 | 2,310,985 | 2.8 |
| 85歳以上 | 987,713 | 1.2 |
| 総数 | 81,510,369 | 100.0 |
| (再掲)65歳以上 | 20,302,339 | 24.9 |
| (再掲)75歳以上 | 8,350,427 | 10.2 |
| (再掲)80歳以上 | 3,298,698 | 4.0 |
2025年(令和7年)12月末現在の運転免許保有者数。運転免許統計の公表区分にあわせています。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
①のタブは免許保有者10万人当たり事故件数、②のタブは事故件数、③のタブは2025年12月末の運転免許保有者数です。①と②は分子が同じで分母だけが違うため、指数の列を見比べると、同じ年齢層でも数字の並びが変わります。
たとえば85歳以上は、②の件数では指数108.1で15区分のうち唯一100を超えますが、①の率では57.2で、全年齢の52.2に近い水準です。同じ年齢層が、割り方を変えるだけで「唯一増えた区分」にも「全体並みに減った区分」にも見えます。
③のタブは、運転免許統計の公表区分にあわせています。①の率と②の件数から免許保有者数を逆算すると、2025年の75歳以上は8,350,680人となり、公表値の8,350,427人との差は0.003%でした。率が小数第1位まで丸められていることによる差で、2つの表が同じ母集団を指していることが確かめられます。
死亡事故は別の統計として見る

ここからは死亡事故の話です。ここまでの全事故とは分母も分子も異なるので、同じ図には混ぜず、別の枠として置きます。
※ 公式データをもとに、可視化pedia編集部が独自に集計・編集したものです。
ここまでの数字は、けがの有無を問わない交通事故全体のものでした。死亡事故だけを取り出すと、別の統計になります。警察庁「令和7年における交通事故の発生状況について」によれば、第1当事者が一般原付以上の運転者で75歳以上の死亡事故は、2015年の458件から2025年の397件へ推移しました。前年比は13件減、3.2%減です。
免許保有者10万人当たりでは、75歳以上が2015年の9.6件から2025年の4.8件へ、75歳未満が4.0件から2.5件へ下がっています。2025年の75歳以上は、75歳未満のおよそ2倍の水準です。
全死亡事故に占める75歳以上の割合は、2015年の12.8%から2025年の17.6%へ上がりました。同じ期間に、全免許保有者に占める75歳以上の割合も5.8%から10.2%へ上がっています。全事故の構成率で見たときと、同じ形の並びが死亡事故でも現れます。
人的要因を見ると、2025年に第1当事者が自動車だった死亡事故のうち、75歳以上は363件中120件(33.1%)が操作不適、75歳未満は1,578件中169件(10.7%)でした。このうちブレーキとアクセルの踏み違いは、75歳以上が31件、75歳未満が15件です。
楓のまとめ|件数で見るか、免許を持つ人の数で割って見るか

ここまでの図を並べ直すと、同じ統計から4つの観察事実が同時に出てきます。どれか1つだけを取り出さずに、まとめて置いておきます。
「高齢ドライバーの事故は増えているのか」という問いに、本記事の図は1つの答えを返しません。件数の図と率の図は別の形をしていて、どちらも同じ警察庁の統計から描かれたものです。4つの観察事実として整理しておきます。
この4つを並べ直すと、「件数は減っていない」「率は他の年齢層と同じように下がっている」「率の水準は若い層のほうが高い」という3通りの言い方が、いずれも同じ統計から成り立ちます。どれか1つだけを取り出せば別々の物語になりますが、件数の図と率の図を並べて置くと、割り方が変わると形が変わるという1つの構造に収まります。
統計の一件一件には、それぞれの事故と、それぞれの生活があります。この記事はその手前で、数の並びだけを示しました。どう読むかは、ここから先の話です。
よくある質問(FAQ)

この記事の数字を読むときは、「件数か率か」「どの年齢層か」「全事故か死亡事故か」の3点をセットで確認してください。同じ言葉が違う数字を指すことがあります。
Q1. 「高齢ドライバーの事故は増えている」というのは間違いですか?
どの数字を指すかによって変わります。件数で見ると、85歳以上は2015年の4,241件から2025年の4,584件へ増えています。75歳以上も2021年の25,530件を底に、2025年は31,933件まで戻りました。一方、2015年の33,547件と比べると4.8%減で、免許保有者10万人当たりでは701.8件から382.4件へ45.5%減です。「増えている」も「減っている」も、指標と期間の取り方によって成り立ちます。
Q2. 免許保有者10万人当たりの率は、どのように計算されているのですか?
各年の年齢層別の交通事故件数を、その年の12月末現在の同じ年齢層の運転免許保有者数で割り、10万人当たりに直した値です。本記事で表3-1-1の率と表3-1-2の件数から免許保有者数を逆算すると、2025年の75歳以上は8,350,680人となり、運転免許統計の公表値8,350,427人との差は0.003%でした。走行距離や運転の頻度は、この分母には含まれていません。
Q3. 死亡事故の数字と、全事故の数字を並べてもよいのですか?
分母も分子も異なるため、同じ図や同じ文の中で並べないほうが確実です。全事故は表3-1-1・表3-1-2、死亡事故は「令和7年における交通事故の発生状況について」の課題2-1が出どころで、資料の作成基準日も異なります。本記事では死亡事故を後半の別枠に置き、図解も分けています。
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